ブレグジット問題で揺れる英ポンドのファンダメンタルズ分析「英ポンドは上昇基調?下落基調?」

ブレグジット問題で揺れる英ポンドのファンダメンタルズ分析「英ポンドは上昇基調?下落基調?」

FX(外国為替証拠金取引)で人気の通貨なのが「イギリスのポンド」(英ポンド・GBP)です。かつては世界の基軸通貨だったわけですから、もちろんメジャー通貨ですが、他のメジャー通貨とはやや異なる特徴があります。今回はイギリスのファンダメンタルズ要素がどれくらい英ポンドに影響を与えているのか分析していきましょう。

英ポンドの特徴と近年の傾向

ボラティリティ(変動)が大きいのが英ポンドの特徴

英ポンドの通貨量は米ドル、ユーロ、日本円に次いで世界第四位です。特徴的なのは、他のメジャー通貨と比較すると、「ボラティリティが大きい」ということです。米ドル/日本円(USDJPY)だと1ドル2円や3円上昇・下落するのに数週間や数ヶ月要するのに対し、英ポンド/日本円(GBPJPY)は10日で1ポンド10円も変動しています。

このように英ポンドはよく動くので「ハイリターンが短期間で期待できる」ために人気が高いとも言えます。実際に2019年最近の為替相場を見ると、10月8日は1ポンド130.85円だったのに対し、10月18日までには1ポンド140.66円まで急騰しています。もちろん1日の中での変動が大きいのも英ポンドの特徴です。

チャート1

変動する要因は様々ありますが、重要な経済指標として注目されているのはBOE(イギリス中央銀行)の「政策金利発表」や「インフレレポート公表」です。ただし、イギリスは2018年8月に利上げを行い、0.75%に引き上げた後は現状維持を保っています

イギリスは北海油田を抱えており資源国の側面もあるため、英ポンドは「原油価格」にも左右されます。他にもテロが発生するなどの「地政学的リスク」が変動の要因です。

そんな中、英ポンドにもっとも大きな影響を与えているファンダメンタルズ要素が、世界中の注目を集めている「イギリスのブレグジット問題」です。

ブレグジット問題に振り回されている英ポンド

2014年6月に英ポンド/米ドル(GBPUSD)は1ポンド1.7ドルをつけていましたが、ブレグジット(EU離脱)を問う国民投票が近づくにつれ下落、しかし一時は国民投票でEUを離脱しないと見込まれ1ポンド1.5ドルまで上昇するものの、2016年6月23日に実施された国民投票でイギリス国民はEU離脱を選択。直後に10%ポンドは急落し、1985年以来の1ポンド1.33ドルをつけました。

さらに「合意なき離脱への警戒感」から英ポンドを売って米ドルを買う動きが加速し、同年10月には1ポンド1.2ドルを割り込むところまで下落トレンドが続きます。10月7日は1分で6%暴落し、1ドル1.19ドルをつけ、その後10分以内に3.5%急騰して1ドル1.24ドルまで戻すという荒い値動きとなっています。「殺人通貨」の異名を持つ英ポンドならではの乱高下です。

問題は「いつまで経ってもこのブレグジット問題が解決しない」ということでしょう。2016年に国民投票が行われて、すでに3年以上が経過していますが、未だにEUから離脱するかしないかでもめています。

そして情勢が変わる度に英ポンドも大きく上下を繰り返しています。日本人からすると、「なぜ国民投票まで行って民意を確認したにも関わらずまったく前進しないのか?」理解しにくい部分があります。英ポンドを扱っているトレーダーにとっては、いつになったらブレグジット問題が解決するのかは非常に重要なポイントです。

ブレグジット問題はなぜ解決しないのか?

EU

なぜ問題が長引いているのかは、2016年の国民投票自体が深い部分まで検討されずに漠然とYesかNoかで行われたという点でしょう。イギリス国民は単純に「移民は制限したい。でも関税のない自由貿易は続けたい」という希望を叶えるためにEU離脱を選択したのでしょうが、そのような都合のいい話にEU側が納得するわけもなく、互いの妥協点を見つけられないままズルズルと時間だけが過ぎているのです。

前首相のメイ首相は苦心して折衷案を提示しましたが、内容として関税の面でEUルールを適用するということから三度も議会で否決されています。EUから外れるのに、EUの関税ルールを適用していたのでは不利な状況になりかねないからです。

結局はEUに制限を受けることに変わりありません。しかもEUから離脱しているのでそのルールを変更することもできないのです。さらに、イギリスに属する北アイルランドとEUに属するアイルランドが陸続きのため、移民や物流を制限することになれば国境を封鎖する必要があります。

また、スコットランドは、ブレグジットは憲法上の合意を根本的に変えるとして、独立の機運が再び高まってきています。もし強行してハードブレグジットともなれば、イギリスはあらゆる面で制限が行われ、食べ物や薬品、製造部品が入ってこなくなり、大混乱になります。こうなると英ポンドはさらに急落し、底が見えなくなることも予想されます。ですから市場にリスクオフの心理が働くのも当然の話です。

ハードブレグジットとは?

ハードブレグジットとは、文字通り強硬なブレグジット、つまり「合意無き離脱」を意味しており、この場合、経済的打撃を受けることを承知で、EUという市場経済から撤退し、移民の受け入れも拒否する姿勢をとることになります。

合意なき離脱は避けたいというのが多くのイギリス国民の意見です。実際に世論調査では合意なき離脱に賛成は33%、反対は46%となっています。しかし一方で合意を取り付けることも難しく、そのために長期間停滞した結果、メイ首相は辞任してしまうことになりました。

新首相には「ブレグジット強行派のボリス・ジョンソン氏」が就任しています。ここに至ってようやく局面が打開される見通しが立つでしょうか。それでも英ポンドはブレグジット問題に揺れています。これはジョンソン首相が合意なき離脱を行うのではないかという警戒感からです。

実際に2018年から2019年にかけての英ポンドの為替相場を確認しながら、ブレグジット問題との相関がどれほどなのか分析していきましょう。

2018年から2019年にかけての英ポンドの為替相場

合意なき離脱への警戒感から1.2ドル割れ

2018年1月7日には、英ポンド/米ドルは1ドル1.3729ドルをつけており、2018年は春先にかけて英ポンドは上昇基調で、4月8日には1ドル1.4241ドルまで上昇しましたが、その後はかなり長いスパンの下落トレンドに突入しています。

同年7月にはEU離脱の強行派閣僚であるデービスEU離脱担当相、ジョンソン外相が相次いで辞任しました。メイ政権の先行き不透明感の懸念が高まっていったためです。同年12月には離脱案採決の延期を表明。ここで2017年4月以来となる1年8ヶ月ぶりの安値1ポンド1.2530まで急落しました。

2019年になると離脱期間が延期され、5月にはメイ首相が辞任を表明。7月にはEU離脱強行派のジョンソン首相が就任し、10月末の離脱を目指すことになります。しかし野党が過半数を占める議会では離脱案の承認を得ることができず、合意なき離脱への警戒感がどんどんと募っていきました。2019年8月には2016年の国民投票以来となる1ポンド1.2ドル割れまで一時は英ポンドは売られました。

チャート2

2018年4月から2019年8月にかけては、こうしたブレグジット問題の影響が強く、英ポンドは下落基調です。流れが変わってきたのは底をつけた8月以降でしょう。10月31日までには必ず離脱すると公約を掲げていたジョンソン首相でしたが、10月19日までにEUと合意できなければ2020年1月まで延期するという法律が定められたことや、議会の承認を得るために総選挙を行うことなどによって、合意なき離脱への警戒感は後退していったからです。

ジョンソン首相の姿勢の変化

元ロンドン市長でもあるジョンション首相は、もともとはEUとの関係に前向きでした。しかし、2016年の国民投票の結果が出てからハードブレグジットを唱える離脱強行派に転じ、国民から支持を集めて首相に就任しています。イギリス国民としても早くこの停滞した状況を打破したいという気持ちが強いのでしょう。

ジョンソン首相は「EUと再度交渉してブレグジット案を作り直したい」という方針で、メイ首相が提案した「関税はEUのルールに従う」といった協定案を破棄し、関税をかけるという合意案を10月にEUに示しています。

北アイルランドについては、EUのルールのもと税関検査をしてアイルランドとの貿易を続けていく方針です。しかしやはり議会の承認を得ることができず、ジョンソン首相は5週間に渡る議会閉会を強行しました。

結果、このやり方は違法であると激しく非難を浴びることになりました。手段としてはもはや解散総選挙しかありませんが、議会の3分の2の賛成が必要であり、労働党としては「不利な状況で総選挙をしたくない」という思いから拒否していました。

ただし表向きの理由は「合意にむけた時間が足りなくなるため」としており、EUが2020年1月まで離脱延期を認めたことで、合意なき離脱となる可能性が後退し、解散総選挙をせざるを得なくなったのです。

こうしてイギリス下院議会定数650を巡る総選挙が12月12日に行われることになりました。合意があろうがなかろうが10月にはEUを離脱する事態がとりあえず回避できたことが、市場のリスクオンに大きな影響を及ぼすことになります。

もちろん総選挙の結果によってはブレグジット案が議会の承認を得られずに2020年の1月を迎え、合意なき離脱となる筋書きも残されていましたので、リスクは残されていましたが、もともとは「離脱を延期するぐらいならば溝で野垂れ死んだ方がましだ」と言い放っていたジョンソン首相が妥協案を示したことはポンド高に大きく影響を及ぼしました。

英ポンド/米ドルの日足チャートを見ても、10月のEU離脱が回避できるという見通しが強まると共に英ポンド高となり、10月9日には1ポンド1.2206ドルだったのが、10月18日には1ポンド1.2973ドルまで上昇しています。ここから先、英ポンド高が続くかどうかは総選挙で与党の保守党が議会の過半数の議席を確保できるかどうかの見通しにかかっていました。

12月の総選挙の影響は?

12月11日時点の世論調査では、保守党は339議席という予想になっています。実際は過半数の326議席にも届かないのではないかというネガティブな情報も流れました。しかし、実際に総選挙が行われ、BBCの出口調査によると保守党が368議席をとる見通しというニュースが流れて、米ドルに対して英ポンドは2.5%上昇しました。

日本円に対しても英ポンドは2.7%も上昇しています。蓋を開けてみないと結果はわからないというのは、2016年の国民投票同様で、イギリスの特徴なのかもしれません。

総選挙の結果、保守党は過半数の326議席を大幅に上回る365議席を確保しました。これによりジョンション首相のブレグジット修正案は下院議会を通過することになり、2020年1月のEU離脱はほぼ間違いない状態です。

英ポンド/米ドルは12月16日には1ポンド1.3331ドルまで上昇し、一時は1.3420ドルの高値をつけましたが、そこからは伸び悩み英ポンド売りに転じています。12月20日にはイギリスの7-9月GDP改定値が発表され、上方修正だったために一時は英ポンド買いの動きも見られましたが、最終的に1ポンド1.3000ドルで終えています。やはりブレグジット問題が解決したわけでないことが上値を限定的にしています。

チャート3

2020年1月にEU離脱が正式に決定しても、2020年12月末までの移行期間でEUとの貿易交渉などをまとめなければなりません。ジョンソン首相は、98%の商品に関税がかからない「EU-カナダ」の貿易協定などをモデルにした経済的負担のない形での締結を望んでいますが、実際カナダは締結までに7年もの月日を費やしており、この期間での取り決めはかなり厳しいという見通しです。

移行期間は2年の延長が可能ですが、ジョンソン首相は「いかなる延長も認めない」と宣言しており、合意なき離脱の可能性も残されています。この解決が今後の英ポンドの上昇には不可欠でしょう。

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下落基調に歯止めをかけられた2019年後半でしたが、はたして2020年の英ポンドは上昇基調となれるのか?やはり一番の注目はブレグジット問題となりそうです。

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普段は会社員として某製造メーカーの社内SEをする傍ら、主にEAを使ったFX自動売買や裁量トレードを行っています。ハイレバレッジと追証なし(ゼロカット)の環境を求めて海外FXに移行。今ではもっぱら海外のブローカーを使いまくっています。実体験を基に、信用できる情報発信ブログを目指していきます。