「フィボナッチ」と聞いて、まず頭に思い浮かぶのは「フィボナッチ・リトレースメント」だと思います。実は、フィボナッチ分析は7種類あり、組み合わせて使うと相場の動きを確率的な観点で予想できるようになります。
今回は、フィボナッチの基礎から私が実際に使っているチャート分析方法を紹介していきたいと思います。
- POINT1 5種類のフィボナッチはどのようにチャート分析に役立つのか
- POINT2 過去の相場ではどのように機能していたか
- POINT3 フィボナッチ分析で知っておきたいMT4の設定方法
プロトレーダーが愛用する「フィボナッチ」
身の回りにあるフィボナッチ
最初、私がトレードを始めたときは「何でこんなところで反発するの?」と、たびたび疑問に感じていました。でも、今から考えると、フィボナッチで反応していたのかな…と感じます。
フィボナッチ数列というのは、イタリアのレオナルド・フィボナッチ氏が研究した「フィボナッチ級数」という理論から考えられたものです。自然界に見られる私たちが感覚的に「きれいだな」と感じるものは、フィボナッチ数列が関係しているそうです。(例えば、ひまわりの種、巻き貝...etc.)
また、ギリシャのパルテノン神殿が、見事な黄金比(1:1.618)で設計されているというのも有名ですね。実は黄金比もフィボナッチと関係が深いのです。
もちろん、チャートとも深い関係がありますが、その前にフィボナッチ数列について簡単に説明していきたいと思います。
フィボナッチとは何か?
フィボナッチについて簡単に説明したいと思います。次の数列を見て、法則性を見つけてみましょう。
「0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233………」
この数列には2つの法則があります。
連続する2つの数字の合計が次の数字になっていること。
0+1=1
1+1=2
1+2=3
13+21=34
…
このように、どこまでも同じ計算をして出た数字を並べたのがフィボナッチ数列です。法則その1は有名なのですが、私たちトレーダーが注目するのは、法則その2です。
- 最初の4つの数字を除けば、任意の数字を次の数字で割り、数字が大きくなるほど、計算値が0.618に近づく
具体的には、
8÷13=0.615384615…
13÷21=0.619047619…
21÷34=0.617647058…
34÷55=0.618181818…
55÷89=0.617977528…
…
限りなく0.618に近づいていく。(収束していく。)
- 任意の数字を2つ後の数字で割ると、計算値が0.382に限りなく近づく
8÷21=0.380…
13÷34=0.382…
21÷55=0.381818181…
34÷89=0.382022471…
55÷144=0.381944444…
…
限りなく0.382に近づく。(収束していく。)
少し難しい説明になってしまいましたが、重要な数値は主に4つです。%表示をすると、
「100% 61.8% 50% 38.2% 0%」
です。
理論の話はここまでにして、実際のトレードの話に移っていきたいと思います。興味のある方は、フィボナッチの仕組みが詳細に書かれている本を読んでみると、さらに興味深い発見があるかもしれません。
フィボナッチがなぜ重要なのか
フィボナッチは、トレードをしている人なら、おそらく一度は使ったことのあるツールなのではないでしょうか。チャートは不思議なもので、ランダムに動いているように見えますが、過去のチャートをフィボナッチで分析してみると、本当に綺麗に反発しています。
私たちトレーダーが覚えておくことは、フィボナッチが世界中のトレーダーに意識されているという事実です。世界中のトレーダーが注目しているということは、新規注文や決済注文が集中しやすいということにも繋がります。売買が集中するポイントを意識すると、具体的なエントリータイミング・決済タイミングをつかみやすくなります。
フィボナッチを引くときのポイントは、より多くのトレーダーが注目している高値と安値を使って分析することです。
- フィボナッチ付近には売買注文が集中しやすく、売買ポイントになる。
- より多くのトレーダーが注目している高値と安値でフィボナッチ分析をすると、勝率があがる。
長い時間足ほどトレーダーが注目する
フィボナッチをどの時間足で使えばよいのかについてですが、私は日足だと思っています。ヘッジファンドや機関投資家の動きを見ようという意見もありますが、それらに加えて世界中にいる多くの個人投資家が基準としているのは日足です。
日足は節目になりやすく、テクニカル分析の影響が大きくなります。
インターネットがまだ普及していなかった時代、当時は新聞の夕刊でその日の高値・安値・終値を確認して、翌日電話で注文していました。新聞に掲載されるのは、当日の始値と終値です。PCがないのでチャートも自作していたんですね。(当時のトレーダーはスゴイ…)これが日足チャートの原型です。
この時の名残なのかどうかは分かりませんが、個人投資家の中でもベテランの人は日足に注目していることが比較的多いと思います。一目均衡表、ボリンジャーバンド、ピボットなどの有名インジケーターが基準としているのも「日足」です。
ですので、可能ならフィボナッチも「日足」を使うのが良いと私は考えています。ですが、1時間足や4時間足でも十分活用できます。
スキャルピングなどで、1分足や5分足などの短い時間足の場合はどうなのかという疑問があります。結論から言うと、フィボナッチ分析はできますが、日足と比較すると日々のノイズの影響を受けやすく、精度が落ちてしまいます。
逆に、週足や月足でも、誤差の幅が1,000Pips以上などになってしまうため、やはり日足がおすすめです。日足でも誤差は生じますが、週足や日足ほど大きくはなりません。
フィボナッチ分析ツールを使ってみる
まずは王道のフィボナッチ・リトレースメントです。
MT4に標準装備されているフィボナッチ分析ツールは、フィボナッチ・リトレースメントを含めて5種類です。
- フィボナッチ・リトレースメント
- フィボナッチ・エキスパンション
- フィボナッチ・タイムゾーン
- フィボナッチ・ファン
- フィボナッチ・アーク
フィボナッチ・リトレースメントが重要であることには違いないのですが、実際のトレードでは1つのツールだけでなく、複数の分析ツールを使うことをおすすめします。(私だけではないと思いますが、あっさりと抵抗帯を突き抜けられてドキッとした経験がある方も多いと思います。)
それぞれの分析ツールについて簡単に見ていきましょう。
フィボナッチ・リトレースメント
利用目的 | サポート・レジスタンス価格帯を知る |
トレードスタイル | 押し目買いや戻り売り(トレンド方向への順張り) |
最も使われている分析ツールで多くのトレーダーが利用しています。直近の高値と安値を結び、フィボナッチ比率からサポートやレジスタンスとなる価格帯を見極めます。トレードを始めたときから、押し目買い・戻り売りをするときによく利用しているツールです。
一方、どこを起点(基点)としてフィボナッチ・リトレースメントを引くかによって、結果が全く違ってきます。また、チャートが進行している段階で見極めるのは思ったより難しいです。
- 調整は38.2%を超える場合がほとんど
- 50%(半値)の価格帯を意識しているトレーダーが多い
- 61.8%付近を実体で超えた場合、トレンド転換の可能性あり
フィボナッチ・エキスパンション
利用目的 | トレンドの最終目標値を分析できる(決済価格の目安) |
トレードスタイル | トレンド方向への順張り |
私のおすすめは、このフィボナッチ・エキスパンションです。エキスパンションという言葉には、「拡張」という意味があります。あまり注目されることはないのですが、トレード戦略が最も立てやすいフィボナッチ分析ツールだと考えています。
トレンドが発生したときには、一方向に進み続けるのではなく反動があります。そこにフィボナッチ比率を当てはめて、最終的にどの価格までトレンドが到達するのかを予測できるので、トレンドフォローの決済ポイントを判断するために非常に有効な分析ツールです。また、エントリーポイントの見極めにも役立ちます。
MT4に最初から設定されている数値は以下のとおりです。
- 61.8%
- 100.%
- 161.8%
私は、デフォルト設定のまま利用しています。
もう少し数値を追加したい場合は、次の2つの数値が有名です。
- 78.6%・・・・海外トレーダーの中で有名(0.618の平方根)
- 261.8%・・・フィボナッチ数列の応用
フィボナッチ・タイムゾーン
利用目的 | 時間的なタイミングを予測する |
少々マニア向けなのですが、隠れたインジケーターとして使ってみるのも面白いと思います。フィボナッチ・タイムゾーンは時間に注目したフィボナッチ分析ツールです。時間に注目した分析ツールは、一目均衡表が有名ですが、フィボナッチ・タイムゾーンは海外トレーダーにも注目されているようです。
「チャートは一定のサイクルで動いている」と聞いたことがあると思います。フィボナッチ比率を時間に置き換えて考えてみれば、相場の流れが変わる時間も分かるのではないかということです。
「前回のトレンドが続いたのはこれぐらいだったので、次回のトレンド開始はこのぐらいで始まる。」というように、時間に注目したフィボナッチ分析です。問題は、どこを起点(基点)にするのかで大きく結果が変わってしまうことです。
フィボナッチ・ファン
トレンドラインをよく使うという方であれば、フィボナッチ・ファンが使いやすいと思います。紹介されることは少ないのですが、トレンドがまだまだ続くのか、それとも弱まっているのかを判断できる分析ツールです。
本来の使い方は、トレンドラインで反転する場所をフィボナッチ比率で予測することなのですが、私はトレンドの強弱を測る分析ツールとして利用しています。また、ブレイクアウトの目安としても利用できます。
フィボナッチファンの比率
参考までに、私がフィボナッチ・ファンを見るときの感覚についてまとめです。
38.2% | トレンドが勢いづいていますが、調整が入ることも念頭に置いています。いわゆるオシレーターのような役割です。 |
50.0% | 50.0%を維持しているのであれば、安定してトレンドが継続している。50.0%を割っているのであれば、トレード休止です。 |
61.8% | ここを割ったら、トレンドが転換した可能性を疑う。日足であれば、ブレイクアウトとして順張りを仕掛けることができる。 |
フィボナッチ・アーク
フィボナッチ・アークという言葉を初めて聞く方も多いと思います。アークとは「円弧」を意味しており、フィボナッチ・リトレースメントに時間的概念を入れた分析ツールです。
ですが、フィボナッチ・アークは単独で使うよりも、トレンドラインや水平線と組み合わせることによって高い効果を発揮できると感じています。また、時間の概念を入れるのであれば、タイムゾーンとリトレースメントを併用した方が見やすくなります。
フィボナッチの参考図書です。
フィボナッチブレイクアウト売買法(パンローリング社) 第5章 P164
https://www.amazon.co.jp/dp/4775971336
実は、エリオット波動とフィボナッチは非常に深い関係があります。エリオット波動理論の中では、「トレンドは、推進波(トレンド方向に進もうとするトレンド)と修正波(トレンドを戻そうとする力)で構成されている」と説明されています。
調べてみると、リトレースメントという言葉には、「押し・戻り」という意味が含まれているようです。実は、エリオット波動を考えたラルフ・ネルソン・エリオットの著書「自然の法則(Nature’s Law)」では、「フィボナッチがエリオット波動原理の数学的基礎である」と述べています。
私たちが知っているフィボナッチとエリオット波動は相性が良さそうです。ちなみに、エリオット波動理論は、ダウ理論とも関係が深いといわれています。
フィボナッチ・リトレースメントの引き方
ここまで、MT4で使える5種類のフィボナッチ分析について紹介してきました。どのフィボナッチでも弱点となるのが、「どこを起点にしてフィボナッチ分析をするのか」という点です。トレーダーによって、大きく分かれるポイントだと思います。
何か基準があれば引きやすいのではないかと考え、今回は「ZigZag」(ジグザグ)というインジケーターをご紹介いたします。
正しくラインを引くためにZigZagを利用する
ZigZagは、計算によってチャートに高値と安値を結んでくれるシンプルなインジケーターです。細かい紹介は行いませんが、使っているトレーダーは一定数いらっしゃると思います。
このZigZagの利点は、あいまいになりがちな高値・安値のラインの引き方に一貫性を保てるという点です。MT4やMT5を使用している場合は、ZigZagの数値はデフォルトのままで大丈夫です。MT4に標準装備されているインジケーターなので、すぐに利用可能です。
上の図を見てみると、おおまかな相場の流れが分かると思います。実際にフィボナッチ比率を当てはめてみたところ、かなり相性が良いと感じました。
ZigZagは以下の手順でチャートに表示できます。
デフォルト設定の状態でOKをクリックしてください。
実際にフィボナッチが機能しているのか検証
ここまで、フィボナッチの説明をしてきましたが、一番気になるのは「実際の相場でフィボナッチが本当に機能しているのかどうか」です。フィボナッチ・リトレースメントはよく知られていますが、エキスパンションやタイムゾーンなどの精度はどうなのか、気になったので調べてみました。
コロナショックは予測できのか
コロナウィルスの流行で相場も乱高下していますね。ですが、ドル円相場を見てみると、2020年2月末までは円高になるどころか円安にどんどん向かっているというような状況でした。
あるニュース記事に「リスクオフの円高は終わったのではないか」と書かれていましたが、3月に入ると突然112円から101円台まで大暴落しましたし…。フィボナッチ・タイムゾーンで検証してみたのですが、思ったような結果は得られませんでした。
図を見ると、ちょうど800.0の時点で流れが変わって一気に円高が進んでいることが分かります。ですが、起点の場所を何度も変えたりして、やっとできたという感じです。後から見れば分かるですが、やはりタイムゾーンだけでトレード判断をするのは難しそうです。
「もしかしたら、流れが変わる可能性がある」ぐらいの感覚でちょうどいいと思います。
ドル円価格が101円台まで下落した後、少し反発するのかなと思い、フィボナッチ・エキスパンションを引いてみました。以下の図はドル円4時間足です。
エキスパンションを引いたのは103.079を付けたあたりですが、最終的にはフィボナッチ比率161.8%まで急上昇しました。ランダムに動いているように見える相場でしたが、フィボナッチ比率が確実に意識されているように思えます。
61.8%(一番下の青線:FE 61.8)を実体で超えた時間足で買いエントリーを意識し、61.8%で反発したのを確認しました。さらにGMMA(複合型移動平均線:ガンマ)も良い方向になっていたので、新規買いポジションを持ってみます。
エントリー例
エントリー根拠 | フィボナッチ61.8%で反発したこと,GMMAが良い形になったこと。 |
エントリー価格 | 106.650円 |
ロット数 | 0.10(1万通貨) |
目標価格 | フィボナッチ比率161.8%(110.800円) |
実際の決済価格 | 110.500円(節目の価格だったため) |
獲得Pips | 385 pips |
利益 | 38,500円 |
これは上手くいった例ですので、100%成功するというわけではありません。ですが、感覚的には、60%以上はあるのではないかと思っています。フィボナッチ・リトレースメントよりも、フィボナッチ・エキスパンションの方が断然使い道が豊富です。
フィボナッチに関する便利機能を紹介します
MT4でフィボナッチをワンクリックで利用する設定方法
MT4でフィボナッチを使うには、ツールバーからフィボナッチを選んでチャートに表示させるというのが一般的ですが、もう少し手っ取り早くする方法はないのか探してみました。
ここでは、ツールバーには十字線やトレンドライン、水平線などを使ってみます。
フィボナッチ分析ツールを表示させる
左から順番に
- カーソル
- 十字カーソル
- フィボナッチ・リトレースメント
- フィボナッチ・エキスパンション
- フィボナッチ・タイムゾーン
- フィボナッチ・ファン
- トレンドライン
- 垂直線
- 水平線
です。
この設定で、ワンタッチでフィボナッチツールが利用できるようになりました。少しの設定ですが、気軽にフィボナッチを使える点がメリットだと思います。
フィボナッチ計算機を活用してみる
Investing.comというサイトが提供しているフィボナッチ計算機を紹介します。
https://jp.investing.com/webmaster-tools/fibonacci-calculator
リトレースメント | フィボナッチ・リトレースメントと同じ |
拡張 | フィボナッチ・エキスパンションと同じ |
上昇トレンドで説明したいと思います。上昇トレンドの場合は、安値が「起点」となり、高値が「終点」となります。そして、現在値が高値よりも下回っている場合に、上記のフィボナッチ計算機を利用できるようになっているのです。
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