FXの取引プラットフォームとしては長年MT4の人気が高く、ほとんどの海外FX業者もMT4を取引プラットフォームとして採用しています。MT4はカスタマイズ性が非常に優れており、インジケーター・自動売買プログラムを比較的容易に作成できるという魅力があります。
2011年にMT5がリリースされましたが、MT4は現在でも最も人気の高い取引プラットフォームとして君臨しています。しかし、裁量トレードでは「一括決済注文ができない」「板情報が見られない」などの弱点もあります。
今回ご紹介する「cTrader」は、MT5と同時期に誕生した統合型FXトレーディングアプリケーションです。ロンドンの Spotware Syslems という金融会社によって、2011年に開発されました。知名度こそ低いものの、MT4にも劣らない機能を数多く備えており、一部のトレーダーからはMT4以上の高い評価があります。
ちなみにこのSpotware Syslems という会社は、2018年に開催された「Finance Magnates 2018 Awards」のFXトレードプラットフォーム部門で最優秀賞を獲得しています。
ECN方式で透明性を重視した取引プラットフォーム
cTraderは、ECN方式を前提として開発された取引プラットフォームです。ECN方式とはElectric Communications Networkの頭文字からとられた略で、トレーダーの注文は直接インターバンクに流され、注文が自動的にマッチングされる仕組みのことです。STP方式と同じNDD方式の1つですが、仕組みが少しだけ異なっています。
STP方式とは、トレーダーの注文は一旦FX業者内のサーバーを経由してインターバンク市場に流される仕組みです。ディーリングデスクなどの介入はありませんが、スプレッドに業者の利益分が上乗せされて表示されます。ですから、海外FX業者では国内FX業者よりも全体的にスプレッドが広く設定されています。
一方、ECN方式はトレーダーの注文がそのままインターバンク市場に直結し、注文同士がオークション形式でマッチングされる仕組みになっています。ECN方式では第三者の介入を一切受けませんので、取引形態の中で一番クリーンな環境といえます。
ECN方式において、海外FX業者は、トレーダーとインターバンク市場※をつなぐ仲介役です。海外FX業者は、インターバンク市場への仲介手数料を「取引手数料」として徴収することにより収益を上げています。
cTraderに表示されるスプレッドは、インターバンク市場のスプレッドがそのまま表示されています。スプレッドで利益が得られない代わりに、取引手数料が徴収される仕組みです。また、cTraderは、DMA(ダイレクトマーケットアクセス)を実現しているので、公平で透明性の高い取引が期待できます。
※インターバンク市場とは?・・・大手金融機関やヘッジファンドなどの注文が集まる電子取引所のことです。
cTraderとMT4では何が違うのか?
cTraderとMT4ですが、そもそもこれらは全く別の概念で開発されているため、性能や機能にかなり違いがあります。
項目 | cTrader | MT4 |
---|---|---|
直感的操作 | 直感的操作が可能(裁量トレードに適している) | 操作に慣れるまで時間がかかる |
板情報 | 閲覧可能 | 不可能 |
ワンクリック決済機能 | 同時一括決済機能・ドテン注文など様々な最新の注文方法がある | ポジションを1つずつ決済する必要があるため、高速スキャルピングには不向き |
自動売買 | cAlgoというプログラム言語を使用しているが、日本語の解説が少なく専門知識が求められるため困難 | MQL4言語を使って、比較的自由に作成可能 |
カスタムインジケーター・EAの種類 | MT4よりはるかに少ない | 種類も豊富、一般公開されている数も多い |
対応デバイス | ほとんどのデバイスに対応している | 制限があり、Windows PC以外では使いにくい |
主にMT4は自動売買の面で優れている一方、裁量トレードをする人でオリジナルインジケーターを使わないのであればcTraderに軍配が上がりそうです。
cTraderの主な特長を紹介します
特徴その1: 直感的操作ができる
cTraderは、直感的な操作ができるGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)を採用しています。そのため、基本的には説明を見なくても、操作方法をすぐにマスターできるように設計されています。また、完全日本語対応になっていますので、英語ができなくても心配する必要はありません。
もう1つの魅力が「時間」を日本語表記に変更できるという点です。
海外FX業者では、サーバーの時間が日本時間ではありませんので、MT4に表記される時間もブローカーのサーバーに合わせた時間が表示されます。これは、日足を金曜日(日本時間:土曜朝)のNY市場が閉まる時間に合わせることにより、週に5本作成されるようにするためです。
MT4では、チャート上の表記も取引履歴の時間もすべて、使用しているFX業者のサーバー時間で抽出されてしまいます。過去の取引を分析しようと思っても、専用のインディケーターを利用するか、自分で再計算しなければなりません。
cTraderでは、日本時間(UTC+9)の表記にも対応していますので、このような余計な手間が要りません。直感的に操作ができ、取引に集中できる環境を提供しています。
特徴その2: 板情報が閲覧できる
cTraderは、板情報が閲覧できることも強みといえます。株の経験がある人はご存知かもしれませんが、FXで板情報を見る機会はほとんどないと思います。
これは株取引とFX取引の仕組みの違いによりますが、cTraderはインターバンク市場に直接アクセスできるので、他に参加している大手ヘッジファンドや金融機関も含めた取引ボリュームを知ることができます。
画像のように、注文を投げたいレートの取引量が、あらかじめ十分かどうか判断できますので、約定した際のスリッページに怯える必要がありません。
しかし、国内FXトレーダーの注文やDD業者、STP方式の口座を使っているトレーダーの注文は反映されていません。なぜなら、ポジションはそれぞれのFX業者がカバー取引をするなど業者内で決済され、インターバンク市場に正確な情報は届かないからです。
特徴その3: 特徴その3 スキャルピングに役立つ注文/決済機能
「決済注文がワンクリックでできること」もcTraderの特徴です。また、最近追加された「アドバンス決済注文」というものがありますが、特にスキャルピングをメインとするトレーダーにとってはかなり重宝する機能でしょう。
MT4では、ポジションを決済するのにも誤差が発生します。例えば、勢いよくローソク足が伸びたところで決済したいと思ったとき、ポジションを1つずつ決済しなければいけません。
そもそも、MT4は高速回転をするようには設計されていませんので、ドテン注文、全ポジション一括決済などの機能もありません。1つ1つ手動で決済しなければいけませんので、どうしてもタイムラグが発生してしまいます。
一方、cTraderはスキャルピングをする方も利用しやすいよう、決済注文方法の種類が豊富です。
- ポジション一括決済注文(全ポジションワンクリック一括決済)
- ドテン注文(決済と同時に反対方向にエントリーすること)
- 建玉倍増注文(即時同じポジション量を注文する)
- アドバンス決済/損切り注文
ポジション一括決済注文
MT4には備わっていなかった「全決済注文機能」がcTraderにあります。ローソク足が伸びた瞬間や利益が最大になったときなどにワンクリックで全決済できます。例えば、ボリンジャーバンドの3σにタッチした瞬間に決済ということも可能です。
ドテン注文
ドテン(途転)注文は「現在のポジションを決済し、反対方向にポジションを建てること」です。スキャルピングトレードではよく利用すると思います。例えば、ドル円の買いポジション10.0Lotのドテン注文は、「10.0Lotの買いポジションを決済し、同時に10.0ロットの売りポジションの注文」です。
ドテン注文は、はっきり言って難しいと思います。とりわけ、損切りをした後にするドテン注文は、かなり抵抗があります。
損切りをするというのは、予想が外れたと自分が認めたときです。逆張りトレードであれば、レンジ相場を狙ってエントリーしていたものの、ブレイクしてトレンド相場になり損切りをすることがあると思います。
このような状況でドテン注文ができれば、大きなトレンド相場を逃さずに済みます。
建玉倍増注文
建玉倍増注文は注意が必要です。含み損が出ている状況で注文すると、いわゆるマーチンゲール法となります。
ダブルアップ注文ボタンをクリックすると・・・
→ 10.0 Lotの新規買いポジションを成行注文する
→ 合計 20.0 Lot
さらに、ダブルアップ注文ボタンをクリックすると・・・
→ 20.0 Lotの新規買いポジションを成行注文する
→ 合計 40.0 Lot
典型的なマーチンゲールとなってしまうので、個人的にはあまり使わない方が良いと思いますが、スキャルピングであれば、短時間なので比較的問題は無いでしょう。
アドバンス決済/損切り注文
新しく追加された機能が「アドバンス決済/損切り注文」です。
アドバンス決済/損切り注文は、cTraderが起動している間しか機能しません。cTraderからログアウトもしくはPCの電源をOFFにすると、アドバンス決済/損切り注文は約定できなくなります。
通常の指値・逆指値は約定できます。
アドバンス決済注文は「指定価格でポジションの一部を決済できる」という注文方法です。エントリーポイントから最大4つの決済ポイントを設定できます。
「あともう少しで利益確定できたのに・・・。」というような経験は誰にでもあると思います。筆者も、あと数Pipsまで迫ったけれど約定できず、含み損になってしまったという苦い経験があります。
その問題を防ぐのが「アドバンス決済注文」になります。
「アドバンス損切り」注文は、指定Pips以上利益方向へ伸びたら、損切り価格をエントリーポイントに設定し直す注文です。こちらも大変役立つ機能です。
ただ、cTraderを起動した状態にしないと、機能しないのが弱点です。VPSを使えば問題はないのですが・・・。今後のアップデートに期待したいところです。
特徴その4: 約定力が非常に優秀
cTraderは先述の通り、インターバンク市場に直接アクセスするDMA(ダイレクトマーケットアクセス)を実現している取引プラットフォームです。直接注文データがインターバンク市場へ流れるようになっていますので、約定力も抜群です。
たとえ大きなLotになっても、取引が活発に行われることによって、マッチングできる注文が出た時点で約定されます。
特徴その5: リクオート(約定拒否)・取引制限なし
cTraderではリクオート(約定拒否)・取引制限が起こりえません。この理由も「インターバンク市場に直接注文が流れる」からです。ですから、そもそも約定拒否という発想が存在しません。
また、取引制限もありません(なぜなら介入しようが無いからです)。インターバンク市場は注文が流れてきたら、注文同士をマッチングさせるだけです。どれだけ超高速の売買、1秒でも0.5秒であったとしても問題ありません。
特徴その6: あらゆるデバイスに対応している
Macユーザーにとって、MT4は本当に使いにくいことと思います。そもそも対応していないので、フル機能を使いたい場合は、Windowsの仮想環境をPC上に作るか、レンタルサーバーを借りるしか方法はありませんでした。
一方、cTraderはあらゆるデバイスに対応しています。Windowsはもちろんのこと、Macにも対応しており、iOSやAndroidアプリも完備されています。同アプリも使いやすいように設計されており、取引に集中できる環境を整えています。
特徴その7: インフォメーションがわかりやすい
一応、デメリットもあります
自動売買取引は敷居が高い
cTraderでも、cAlgoというプログラム言語を使ってインジケーターや自動売買ツールの作成が可能です。しかし、2019年6月現在は日本語での情報が少なく、FIX APIなどの専門知識もないと作成するのは難しいでしょう。
出回っているインジケーターやEAが少ない
インターネット上からダウンロードできるEAやインジケーターも、MT4と比べると圧倒的に少ないです。英語サイトからダウンロードができますが、MT4の方が圧倒的に導入しやすいです。
まとめ
cTraderの特徴は以下の通り。
- 直感的操作ができる
- 板情報を見ることができる
- 約定プライスが事前に見えるため、大口でも安心して取引できる
- ワンクリック注文決済ができる
- 約定力が非常に優秀
- 約定拒否・取引制限なし
- あらゆるデバイスに対応している
そのため、
- 裁量トレードメインであればcTrader
- カスタムインジケーターや自動売買をするのであればMT4(MT5)
という風に使い分けて利用することをおすすめしたいと思います。